むらさきの森

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手術台の上で、目を覚ました‥‥「これから、麻酔をして手術をしますよ、、、わかりますか?‥‥‥」 ‥‥‥『あれ?、、、私、、、救急車に乗る前に、大学病院の出張診療所で医師に、言われたな、、、』 「今日中に、手術しないと、危険ですからね、、、盲腸の腹膜炎に間違えないと思いますから」 「盲腸?‥‥の、腹膜炎?」 よくわからない状況だったが、思い出したことがあった。 父が、昔、バスケのインカレで倒れて、救急車で病院へ‥‥ ‥‥盲腸の手術を延期していたために、腹膜炎になっており、医師は、この患者はもたないと諦めて手術された話を、 恐々と、思い出した‥‥。私は、これまでに、盲腸などと言われたことはなかった。 「なぜ、今なんだ‥‥‥」と自問自答していた‥‥。 執刀医が、「ご説明しましたが、これから、部分麻酔しますからね、、、ご心配だと思いますが、お待ちくださいね」と、 手術室の入り口で、母に話をしていた‥‥。 母が来ていた‥‥状況が飲み込めない私に、手を振ったのだ、、、にっこり笑って‥‥‥。 『この状況で、笑って、手を振るか?』‥‥と、思いながら、手を上げるのが精一杯だった。 ‥‥でもそれで、落ち着きを取り戻せた‥‥。私にとって、母の笑顔は、安心感の何ものでもなかった‥‥。 人生、初手術だ‥‥。 麻酔があまり、効かずに時間がかかった‥‥余計、怖くなって、そばにいる女性の看護師さんに、 「手を握っていてくれますか?手術が終わるまで、そばにいて下さい」とお願いした。 その看護師さんは、ディズニーアニメのシンデレラに登場する、フェアリーゴットマザーのような看護師さんだった。 「大丈夫ですからね、、、ずっと、いますからね‥‥」 と言ってくれたが、忙しいそうに、5分で、私の手を違う看護師さんに任せて、手術の進行の確認を医師としていた。 手術中に、意識がある状態は、怖いの、ひと言だ。 手術室に曲が流れていた‥‥『なんの曲だっけ?』と思っていると、医師が話しかけてきた‥‥ 私から見れば、祖父くらいの医師で、「びっくりしたよね、、、でも、心配いらないからね、、、」と、次々に聞いてくる‥‥ ‥‥好きな食べ物や、好きなアーティストや、これまで観た映画で1番は何?など、なぜ、こんな時に、聞いてくるんだろうと、 イラッとした瞬間もあったが、私の恐怖心の火消しも手術しながら同時進行されていた、その医師には、感謝しかなかった。 入院生活は、思った以上に長くなった‥‥手術は成功したが、予後が思わしくなかった‥‥‥。 当たり前に、食事をしていたことが、いつだったかも忘れかけていた。 もしかして、別の病気が見つかったのかと、疑心暗鬼にもなった‥‥‥。 そんな時は、第六感も息を潜めて、じっと、私が前向きになり、心も体も元気になることを待っていたのかもしれない‥‥‥。 新入社員でスタートしたばかりだったが、長い入院生活で遅れをとったことが、私の気持ちを暗くしていった。
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