舘岡 静 (たておか じょう)という男 ☆

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舘岡 静 (たておか じょう)という男 ☆

舘岡静は、真里夜の中学からの友人だった。 祖父に、外国の血が入っている所為か、髪は色素が薄く黒というよりは金茶っぽく、目鼻立ちはしっかりとし、クラスメイト達よりも頭一つ分は背が高く、身体もしっかりとしていた。アイスグレーの瞳は、王子というよりはゲームの勇者の様な雰囲気だった。 そんな彼を、クラスメイト達は放っておかなかった。 ただ、真里夜だけが彼に、分け隔てなく接していた。 それは、真里夜の自己防衛の様な無意識の行動だった。 高校に進学する頃には、舘岡とは良く話をするクラスメイトの様な関係。 その関係が変わったのは、放課後の教室で不意に舘岡からされたキスだった。 「・・・嫌だったか?」 そう言われて、された二度目のキス。 日直の仕事で日誌を書いているのを前の席で眺めていた舘岡が、急にキスをしてきた事に驚きはしたが、不思議と嫌悪感は無かった。 「・・・嫌では無い・・・かな?」 「そっか。」 そう言って、された三度目のキスは舘岡の舌が唇を少し突っついてきた。 驚いて、少し開いた隙間に入ってきた舌に「ん・・ん。」と零れた声は、舘岡に飲み込まれていった。 それから何度も、授業の合間の休み時間、図書室、放課後・・・と、人目が無い所で盗む様なキスをしたり、誘われるまま舌を絡めあった。 初めて肉体関係になったは、高校1年の夏休みだった。 図書館で勉強した帰り、急な夕立にびしょ濡れになった真里夜を舘岡は部屋に誘った。 その頃には、真里夜は将来について既に考えていた。 結婚相手が、異性でも同性でも、相手が望めば自分が「妊娠」するつもりだった。性行為に居たっては、同性だったら自分は挿入される側で良いと思っていた。 だから、舘岡に誘われ入れられた時は、その気持ち良さに驚いた。 それから、何度か誘われれば身体を繋げる様になった。 その関係は、舘岡が海外へ転校するまで続いた。 元々、転校してきた彼が、ずっとココに残るとも思っていなかったから、舘岡に告げられた時は 寂しくなるとは思ったが、それ以上の感情は真里夜には無かった。 「・・・家の都合で、向こうに祖父の所に行く事になった。」 「そっか。元気でな。」 だから、別れてから、今日まで連絡を取る事は無かった。 そんな舘岡の腕の中で、言われた事に思考が止まってしまう。 「今、フリーだったら構わないだろ?」 「・・・、構わないけど・・・。」 「あぁ、けどお前は婚約者探してたんだっけか?」 「え・・・あぁ。」 「なら、オレが今日から婚約者でも良いよな?」 「え・・・っ?」 チュっと真里夜の旋毛にキスが落され、額、瞼、鼻先、頬にとちゅっちゅっつと音をたてて舘岡はキスを落してく。軽く唇にキスをすると、正面から抱きしめられた。 そっと、真里夜がその背中に手を回すと、抱きしめていた腕に力が込められた。 その腕の力強さに、真里夜は胸が苦しくなった。 「く、苦しぃって。」 「ゴメン。つい嬉しくて。」 そう言って笑った舘岡と、何度目か解らないセックスをした。 この日の翌日、泊まっていたホテルから舘岡の部屋に真里夜は移動していた。 「部屋も余ってるし、一緒に暮らせばいいだろ?」 真里夜の元に、婚約者候補が居座る事は有っても、真里夜が相手の部屋に行く事は今まで無かった。 過去友人達も、真里夜の家に来る事はあったが、真里夜が行く事は殆ど無かった。 ただ唯一、舘岡の部屋にだけは真里夜は行った事があった。 その事に、真里夜は気が付いていなかった。 舘岡の住まいは、真里夜が務めている系列会社の2駅隣の駅。一人で住むには些か・・・かなり、広い3LDKのマンションで暮らしていた。 その広さに、真里夜も内心、驚いたが再会した場所を思い出し、一人納得した。 「真里夜、こっちの部屋使って。」 「ん、ありがと・・・って、ベットは?」 案内された部屋は、十分な広さと収納。壁一面の本棚とデスクが置かれていた。 が、プライベート空間というよりは、仕事部屋の様な雰囲気の部屋だった。 少し不思議に思っていると、後ろから抱き込む様に舘岡が真里夜の顔を覗き込んだ。 「ああ、ここは仕事部屋。寝室はこっち。真里夜の服も少し用意したから。」 「え・・・?」 そう言って連れて来られた部屋は、キングサイズのベットに、ウォーキングクロゼットが備え付けられたお洒落な部屋だった。 クロゼットの中も説明され、舘岡が用意した服と一緒に持ってきていた荷物を置かせて貰った。 「あ、そうだ。真里夜、手貸して?」 「いいけど?オレに出来る事か?」 荷物を整えながら、後ろに立っていた舘岡に答えると、舘岡がプッと吹き出しながら、真里夜の左手を後ろから抱え込む様に取った。 「安物で悪いけど・・・。今度、ちゃんとしたの作りに行くまではしてて欲しい。」 「え・・・!?!」 指に嵌められたシンプルながらも、センスの良い白銀の指輪に、顔を向けるとそのままキスをされた。 流れる様に、その日、舘岡の匂いがするベットで、初夜を迎えたのだった。 週明けの出社迄、舘岡は真里夜を何度も求め、甲斐甲斐しく世話をやいたのだった。 元々、性に対しての欲求は強く無いと真里夜は思ってた。 今までの、婚約者候補だった人達に、自分から肉欲を感じる事は無かった・・・と、思う間もなくユウタとの関係を知ってしまったので、『無意識にそんな空気になるのを避けていたのかもなぁ。』と、抱きかかえられたままの湯船で、真里夜は目を瞑りながら、筋肉質な枕に凭れていた。 ゴリっと、真里夜の背に固い物を感じた時には、何度も咥えこまされた後孔は吸いつき中へと迎えていた。 「んあぁ・・・お湯・・た‥舘岡ぁ・・・はいっ・・はいちゃ・・・ん!!」 湯船が波打ちながら、ばっちゅんばっちゅんと浴室内に肉の当る音と漏れ出る声が響いた。 真里夜自身も知らない最奥も、舘岡は既に入り込んでいた。 少し湯あたり気味になった真里夜をベットに寝かせると、舘岡が少し申し訳なさそうな顔を見せた。思わず真里夜は笑ってしまう。 「わ、笑うなよ。ちょっとは、反省してんだからさ。・・・水、持ってくるから、寝てろよ。」 「ありがと・・・。」 くしゃりと頭を撫でて、舘岡が部屋を出ていくのを横になりながら見送る。 変わってないなぁ・・・。 ぼーっとした頭で、出社した後の事を真里夜は考えていた。 部署は違うが、ユウタも真里夜と同じ会社で、働いていた。ただ、真里夜は本社で働く事が決まっていて、ユウタは一般社員の扱いだった。そんなユウタは、真里夜に見せつけるかの様に毎回、婚約者候補だった人達に送られ出社していた。 一瞬、その相手を想像して、胸に不快感が湧いた。 「真里夜? どうかしたか?」 「えっ・・・?」 「眉間に皺寄ってる。」 皺を伸ばす様に指で撫でられ、水を手渡される。 「ふっ・・水飲めないだろ?」 「ん、皺取れた。そっちの方が、良いな。」 チュっと、眉間にキスすると舘岡が笑みを浮かべた。 沸き上がった不快感は、いつの間にか収まっていた。 代わりに、真里夜の胸にはぽわぽわした温かいモノを感じていた。
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