『久しぶり』は許さない

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河村さんとは夏の終わりの海で出会った。
美和と先輩の結婚式だったあの日だ。

相手が仲良しで尊敬する先輩じゃなければ出席なんかしていない。
二股かけられていたのがわかった時点でさよならしてそれきりのはすだ。

何も知らない先輩を傷付けたくない。

別れた半年後にやるせなさを抱えたまま2人の結婚式に出席した。

帰りに稲垣(いながき)と鈴木(すずき)とふらりと立ち寄った堤防で、河村さんと彼女の会社の後輩の倉部(くらべ)さんが失恋の傷を癒しているところに出会した。

河村さんは俺がなぜ元カノの結婚式に出席したのかを遠慮がちに聞いてきて、そして聞き終わった後『悔しいね』と静かに言った。

憐れむでもなく、興味本位にアレコレ聞くのでもなく、俺の話しだけを聞いて気持ちに寄り添ってくれた彼女に…今思えば一目惚れをしていたんだと思う。

稲垣と倉部さんと4人で何回か飲んだ後、観たい映画が同じだったことをきっかけに2人で会うようになり、今日で4回目だった。

読書も映画を観ることも、自分で運動はしないけどスポーツ観戦が好きなところも、たまに毒舌混じりのお腹を抱えて笑うような鋭いつっこみをしてくるところも、相変わらず俺の話しを聞いて静かに頷いて受け入れてくれるところも当たり前のように夢中になっていった。