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ずっと黙って聞いていた河村さんが店から出て行く美和を見ながら口を開いた。 『ここ…駅からだいぶ遠そうだけど、大丈夫かな…。』 顔を見れば計算的な発言じゃないことはわかる。 会社にも後輩がたくさんいて世話を焼くのに慣れていて、単純に同じ女性として心配しているんだろう。 そんな君が愛しい。 『まだ21時前だしね。 ここから駅までは人通りの多い明るい道だよ。 それに』 やっとこちらを見た。 目が潤んでいる。 『ここで駅まで送ったら、さっきの会話の意味が無くなるから。』 『…うん。』 体を向けると河村さんも体を向けてきて、膝がぶつかる。 『嫌な思いをさせてごめんね。 君のいないところで彼女と話しをするのは嫌だった。 あそこで帰らせてしまったら、もう会ってもらえないと焦った。 キツい言い方をする嫌な奴だと思ったかな?』 黙って首を横に振っている。 『さっき言った通りなんだけど…付き合ってくれないか? 君が好きだよ。 多分あの海で一目惚れしていた。』 潤んでいた瞳から大粒の涙が零れだした。 『私も多分あの堤防を下りる時に手を差し出してくれた時から…』 その後はもう涙で声にならなかったので、店から連れ出した。
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