探偵助手は愛犬とバディを組む

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達ちゃんも煙草(たばこ)を吸う。 煙たいのは嫌だけど、髪の毛や服から大人の匂いがするのは好きだ。 冬馬さんからはいい匂いしかしない。 香水でも使ってるのかな。 そういえば、あのメモの紙も煙草と香水の匂いがするって、達ちゃんが言ってたっけ。 「今はどんなものを書いてるんですか」 「ミステリーなんだけど、少年と愛犬がバディを組む探偵物語なんだ。シリーズ化して結構人気があるんだよ」 「僕とアルみたい! それに僕の叔父さんは探偵なんですよ!」 僕はつい嬉しくなって話してしまった。冬馬さんは一瞬驚いた顔をしたけど、すぐに笑って僕に尋ねた。 「そうなんだ。じゃあ、君たちは今、何を調べてるのかな? 小さな探偵さん」 「あ、えっと…」 僕は少し迷ったけど、冬馬さんにこれまでのことを話して聞かせた。冬馬さんは時々頷きながら僕の話を真顔で聞いていた。 「なるほど。そのメモがこれか」 「はい」 冬馬さんはメモを指に挟んで、急に謎めいた笑みを浮かべた。 「ふうん。と言うことは、君は僕の秘密を知ってしまったんだね」 「え? 何のことですか」 「このメモは僕のだよ」 「えっ」 僕は驚いて冬馬さんの顔をまじまじと見た。 「で、でも、秘密なんて、そんな…」 「本になる前は僕だけの極秘情報だ。ネタバレしたらつまらないだろ? それに知らないうちに、僕の中にある欲望が反映されているかもしれないし」 それは そうだけど これは単なるメモでしょ 「(ひそ)かに誰かを殺したいって思ってるのかも」 「そんな…」 穏やかだった彼の瞳が鋭く光を放ったように見えた。 「すみません。まさか、小説家さんのメモだったなんて」 「あはは。ごめん、冗談だよ。怖がらせちゃったね」 僕はほっと息をついた。 「そうだ。よかったら僕の本、読んでみるかい?」 「いいんですか。ぜひ!」 色んなことがいっぺんに起きて、さっきから僕はわくわくしっぱなしだ。アルも嬉しそうに足元で飛びはねた。 冬馬さんの家は、本当に公園の隣だった。 少し古びた洋館で、レンガの壁には(つた)が張り付いている。今は綺麗に見えるけど、夜中はお化けが出そうで不気味かもしれない。 「今は僕一人なんだ。遠慮しないで」 重いガラス張りの扉をぐいっと開けて、冬馬さんは僕とアルを中に入れてくれた。
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