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いつからだったろう? いつの間にか古びた骨董屋のワゴンに収まっていた僕。 セール品なのにそれでも毎日売れ残っていた。 (半額ですよ、奥さん?) なんて通行人に語りかけてみるも無駄な努力。いよいよ明日は廃棄処分ってやつになるらしい。ったく、最近の人間はモノを大事にしないんだから。 静かに覚悟を決めて横たわっていた僕だったけど。その日の閉店間際、急に温かい両手が僕の身体を包み込んできた。 「ねえ見て、この動物の置きもの!すっごく可愛いよね?お耳が大きいねぇ」 よく通る声の主は、えくぼが似合う若い女の人。 彼女は左手の薬指に収まっていた真新しい指輪を僕の右耳にかけて神妙に唸っている。 「うーん。リングピローにかなりいいね、この子」 「え?それを指輪置き場にするのか?」 隣からのぞき込んできた人が可笑しそうに言った。 「そう。お耳2つあるし、ちょうどいいじゃない?ほら、初樹(はつき)くんのも貸して?」 横の男の指から指輪を抜き取った彼女は、そのまま僕の左耳にカランとかけた。 「ほら、ちゃんと収まるでしょ?リビングの出窓に置こうよ」 「彩乃(あやの)が言うなら俺は構わないけど。……でもクマかぁ。ぷっ」 笑うな。どう見ても猫だろ。 耳だって美しい三角形だろうが。
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