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「でも生活不規則だったせいか指がむくんで体重も増えたのは本当なんだよ。だから、週末にでもサイズ直しに行ってくる」
僕の左耳で重なった2つの指輪を見つめながら、初樹が申し訳なさそうに自分の指をいじっている。
「で、その後にカフェで美味いコーヒーでも飲んでさ。それから森林公園行って散歩してイルミネーション見てさ」
「それ、私も行っていい?」
「彩乃をデートに誘ってるつもりなんだけど?」
顔を朱色に染めた初樹の両脇に、彩乃ちゃんの両手が滑り込んでいく。
「嬉しい!楽しみにしてるね」
満面の笑みで初樹に寄り添っている彩乃ちゃんの腰には、大事なものを抱えるように初樹の両手が回り込む。
「あの……。俺もう帰っていいかな?」
夫婦の仲良しぶりを見せつけられて恥ずかしそうにしているのは相葉くんだ。
あ、ごめん。
存在忘れかけてたよ。
相葉くんはまた僕の方を見た。
「あのさ。なんでもないものにも神様が宿ってることがあるんだけどさ」
「えっと、付喪神ってやつか?」
「そうそう、そんな感じ。日本人らしい考え方だけど、案外本当かもよ」
相葉くんがずっと僕を見ながら話しているので、彩乃ちゃんと初樹は顔を見合わせてからやっぱりこっちを見る。
おいおい。
あんまり注目するなよな。
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