12人が本棚に入れています
本棚に追加
16
「もしかしてトラちゃんにも?」
「大事にしてくれる持ち主を好いて、幸せを願ってくれる神様もいるってこと。案外2人がこうやって仲直りできたのも、そのおかげかもね」
あんまり余計なこと言わないでくれ相葉くん。2人が気味悪がったらどうするんだ。
でも僕の冷や汗なんて吹き飛ばすくらいの彩乃ちゃんの笑い声がリビングに響いた。
「そっかぁ、トラちゃんじゃなくてトラ様なのかもね。この子」
「ふーん。神様ねぇ。でもま、そしたらお礼言うとこなのか?サンキューな、猫」
彩乃ちゃんと初樹は僕の目の前まで来ると、同時に手を合わせてくる。それからまた、頬をくっつけて笑いだした。
幸せそうにしちゃって。よかったよかった。
「じゃあ相葉!今から飲みにいくか」
「今から?うーん」
「いいでしょ相葉くん?明里も誘ってまた4人で飲み会しようよ」
彩乃ちゃんに言われて相葉くんはそうだねと、結局首を縦に振った。
「じゃあトラちゃん。私たちの指輪、もう少し預かっててね」
彩乃ちゃんは僕に言うと、着替えてくるからと鼻歌混じりにリビングを出て行く。ダブルデートってやつだね。楽しんできなよ。
先に玄関に向かう初樹に続いて踏み出した相葉くんは、振り返ってこっちに笑いかけてくる。
「これで良かったですか?神様」
ああ、やっぱ君にはバレてたか。
最初のコメントを投稿しよう!