16

1/1
前へ
/17ページ
次へ

16

「もしかしてトラちゃんにも?」 「大事にしてくれる持ち主を好いて、幸せを願ってくれる神様もいるってこと。案外2人がこうやって仲直りできたのも、そのおかげかもね」 あんまり余計なこと言わないでくれ相葉(あいば)くん。2人が気味悪がったらどうするんだ。 でも僕の冷や汗なんて吹き飛ばすくらいの彩乃(あやの)ちゃんの笑い声がリビングに響いた。 「そっかぁ、トラちゃんじゃなくてトラ様なのかもね。この子」 「ふーん。神様ねぇ。でもま、そしたらお礼言うとこなのか?サンキューな、猫」 彩乃(あやの)ちゃんと初樹(はつき)は僕の目の前まで来ると、同時に手を合わせてくる。それからまた、頬をくっつけて笑いだした。 幸せそうにしちゃって。よかったよかった。 「じゃあ相葉(あいば)!今から飲みにいくか」 「今から?うーん」 「いいでしょ相葉(あいば)くん?明里(あかり)も誘ってまた4人で飲み会しようよ」 彩乃(あやの)ちゃんに言われて相葉(あいば)くんはそうだねと、結局首を縦に振った。 「じゃあトラちゃん。私たちの指輪、もう少し預かっててね」 彩乃(あやの)ちゃんは僕に言うと、着替えてくるからと鼻歌混じりにリビングを出て行く。ダブルデートってやつだね。楽しんできなよ。 先に玄関に向かう初樹(はつき)に続いて踏み出した相葉(あいば)くんは、振り返ってこっちに笑いかけてくる。 「これで良かったですか?神様」 ああ、やっぱ君にはバレてたか。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加