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8
「ただいまトラちゃん。今日は遅くなっちゃった」
いつものようにコートを脱ぎながら話している彩乃ちゃん。今日は初樹との約束の日だったのにな。あいつは今日も遅くなるんだろうな。
「私も久々に飲んできちゃった。熱いなぁ、あはは」
なんだか上機嫌だと思ったらお酒飲んだんだ。
彩乃ちゃんもリフレッシュしないとね。
カチャリ
ん？
左耳が重くなる。
あれ？
間違ってるよ彩乃ちゃん。
君の指輪の定位置は僕の右耳だよ？
僕の思ってることがわかるはずもないのに、彩乃ちゃんは人差し指で僕の頭を撫でてくる。
「指輪ね、私もしばらくするのやめとくね」
しないの？
それって初樹に愛想がつきたってこと？
「左耳だけ重くなっちゃってごめんね」
そうだよ。
せめて平等にしてよ。
でも彩乃ちゃんは赤くて溶けそうな表情で重なった指輪に視線を向けて、また口を開いたんだ。
「------」
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