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翌週 「ただいま」 「初樹(はつき)くんおかえり!今日は早いんだね」 彩乃(あやの)ちゃんがキッチンで洗い物をしていたら、珍しく初樹(はつき)が帰ってきた。 いや、この時間でも十分遅いけど。ちょっとは彩乃(あやの)ちゃんのこと考えて帰ってきたのか? 「どうかしたの?コワイ顔して」 本当だ。初樹(はつき)は怒り顔を隠そうともしないで彩乃(あやの)ちゃんに近づいてく。いきながら、鞄から男物のハンカチを取り出した。 「これ……」 「この前キャンセルしてもらったはずのレストランから電話があってな。彩乃(あやの)の座ってた席に落ちてたからって知らせてくれたんだ」 どういうこと? レストランはキャンセルしたんじゃなかった?でもあの日の彩乃(あやの)ちゃんは確かに帰りが遅くて、しかもちょっと嬉しそうだったっけ。 「男と行ったの?他の男と遊んでたのか?」 「そんなこと……」 言い返しなよ彩乃(あやの)ちゃん。 でも、彩乃(あやの)ちゃんはわかりやすく目が泳いでいて、動揺が隠せてない。初樹(はつき)はそれを苦々しく見下ろしている。
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