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7.0%の笑顔
翌朝教室に入ると、みんながしんと静まった。
「おはよう、誠くん」
「ん」
今日のおはようは少なめだ。
みんなの目が、ぼくに釘付けになる。
ぼくは淡々と自席に向かった。
着席してもワイヤレスイヤホンは装着しなかった。
それはそれで、何も知らない女子は勝手に集まってくる。
「誠くん、今日は音楽聴かないの?」
「聴かない」
これが、イケメンだった奴の答えだ。
0%の笑顔に、女子の群れはすぐに散った。
それから、隣の教室に行って、キコとかキホとかいう女子を呼んだ。
ぼくに従って真実に悪口をぶつけた彼女には、もう会わないと言われた。
その場に居合わせていた野球部の誰かにひどく叱られたらしい。
ぼくよりも堂々としている、その人を好きになったと言われた。
一人、教室に戻る。
窓際に、今さっき来たらしいバスチアンの背中が見えた。
「誠くん、おはよう」
「おはよう、本田」
バスチアンは人懐こくぼくの机に走り寄って来た。
「おすすめしてくれたケーキ屋さん、帰りにさっそく寄ってみたよ。すごくおいしかったよ」
「それはよかった」
他のみんなが、不思議そうにぼくらを見ていた。
ぼくの笑顔はぼくのものだ。
誰のために笑うかは、ぼくが決める。
放課後、ぼくは真実に自分の罪を告白した。
昔、ラグビー仲間の才能に嫉妬して故意にけがさせたこと。
真実の両親の店を悪く言ったこと。
嘘をつくことに慣れていたこと。
謝ったけれど、真実は目を合わせてくれなかった。
「あんたなんか、大嫌い」
腐った根性を叩き直してやると言われた。
真実はイケメンに媚びない。
そういう芯の強さに惚れていた。
幼馴染を、やり直したい。
ぼくの願いに、真実は一つの条件を出した。
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