違和感

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違和感

 たまに会う母の様子がおかしい事には、なんとなく気づいていた。  言動というか、たまに一人で見えない誰かと話しているような感じだった。  おかしいと思うのに、おかしい状態を認めたくない麻耶は、見て見ぬふりをした。    ある日、近所のおばさんが数人で家にやってきた。  すごく言いづらそうだ。 「あのね、気を悪くしないでほしいんだけど…」 一人のおばさんが、申し訳無さそうに話しだした。 「お母さん、様子が変じゃない?病院で見てもらったほうがいいと思って…」  その言葉を聞いた時、麻耶は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。  周りから見てもおかしいと思われているこの状況は、母の事を心配する気持ちよりも、恥ずかしい気持ちが強かった。  私が一人で暮らす家の状況を心配して、おかずをくれたり声をかけてくれているご近所のお母さん達。  きっと、私が哀れで可哀想で、その気持ちが強いだろう…。  おばさん達の表情で、心苦しい思いに駆られた。  『一人でも大丈夫』  その精神で生きてきた私には、母の事を一人でなんとかしなければ…と思っていた。  『でも…、お母さんには恋人が…』  母の今の恋人の浜田修(ハマダオサム)とも、話さなくてはいけなくなった事実に、心は重くなった。  ほとんど会ったことのない修は、私にとってはすごく遠い他人だ。  奥さんを亡くして何年か立っていると聞いている。  嫁いだ娘が1人いるらしい。  母は、修の娘と会うこともあるそうだ。  けれど、私の事は娘のように思いやってくれる事もなく、私の方も慕うこともなく話さない関係だった。  …なのに。  沈んだ気持ちのまま、連絡先として聞いていた、修の電話番号に初めて電話をかけた。
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