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悪夢
朝方の突然の電話。
相手は、海斗と栞が働いているお店の店長さんだった。
栞が麻耶を大切な子だと話していたからか、おばさんから頼まれたのか…、
「栞ちゃんを助けて…」
第一声が、その言葉だった。
私は悪夢を見ているのだろうか…。
連絡を受け、急いで向かった栞の家。
寝てないであろう、おじさんとおばさんの顔。
泣き腫らしたおばさんが、
「こんな時間に、ごめんね…。来てくれてありがとね…」
そう言って、私の手を握りしめた。
私は、かける言葉が見つからず、ただ首を横に振った。
「部屋に居るから…」
そう言って、栞の部屋に目をやるおばさんに頷き、栞の部屋に向かった。
ドアの前に立ち、目を閉じる。
『全部夢であって…』
そんな思いで、ドアを開けた。
真っ暗な部屋。
静かな部屋は、栞のすすり泣く声だけが響いていた。
栞は、暗い部屋に1人、ベットにもたれかかりながら蹲っていた。
麻耶は、流れる涙を手で拭いながら、静かに栞の隣に座った。
栞の目からも、とめどなく涙が溢れている。
「…海斗、居なくなっちゃったよ…。海斗ー!」
そう言って泣き叫ぶ栞を、麻耶は抱きしめることしか出来なかった。
夜のデート。
海斗と栞が乗った車は、飛び出してきた動物を避けようとして崖から落ちたらしい。
海斗は、とっさに栞を守るために、自分が下敷きになるようにハンドルを操作したようだった。
それは、即死の海斗と、少しの打撲しか無い栞の姿を見れば、一目瞭然だった。
泣き崩れる栞を見て、
『海斗のバカ!約束したのに…!』
『任せていいって言ったのに!』
『栞を頼んだのに!なんでよ!!』
麻耶は、泣きながら心の中で叫んでいた。
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