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麻耶は、5日間仕事を休んだ。
自分のためでも、母親のためでも、こんなに休んだことは無かった。
でも、怖かった。
栞を失いそうで…。
目の前の栞は、食欲もなく、ただ息をしてるだけ…、そんな風に見えた。
あと少し、ほんの少しでも心が折れたら、生きる事を諦めそうで、麻耶は不安で怖くて、ただそばに居た。
海斗のお葬式にも付き添った。
初めて会う海斗のお母さんは、すごく温かくて優しそうな雰囲気だった。
泣き腫らした顔で栞の手を握り、
「栞ちゃんが生きていてくれて、良かった…」
そう言って涙を流す、海斗のお母さんに、
「私だけ助かって…、ごめんなさい…」
泣きながら栞が答えた。
「そんな風に、思わないで。生きていてくれて、ありがとね」
拭いきれない涙をハンカチで拭いながら、海斗のお母さんが栞に言葉をかけた。
栞は泣きながら頷いた。
泣いている栞の後ろの麻耶に気づき、
「あなたも、来てくれてありがとね」
そう優しく声をかけてくれた海斗のお母さんに、麻耶は泣きながら頷くことしか出来なかった。
お墓に向かう田んぼ道。
晴れた青空の下、静かに歩く参列者の列の中を、麻耶は栞の少し後ろを黙って歩く。
『海斗君、お願い…。…どうか、どうか、栞を見守っていて…』
栞の後ろ姿を見つめながら、麻耶は心の中で何度も何度も呟いた。
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