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氷室さんのことが段々話題に上らなくなっていき、一月経った頃、氷室さんは見つかった。
担任の先生からは、「氷室さんは無事見つかりました」と報告されただけだった。
しかし、詳細はすぐに生徒達の間に広まった。
学区内にある古い空き家に夜になると野良犬が出入りしていると通報があり、警官がパトロールに行ったところ、制服のまま錯乱した状態で氷室さんは見つかったのだ。
鍵もかかっておらず、縛られてもいなかったのに、なぜそんなに長い期間、氷室さんはその空き家に居たのか？ どこかに連れ去られ、そして連れてこられたのか？ 謎が残った。
しかし、本人が何も説明できない状態なのと、氷室さんの両親もあまり大事にしたくないと希望したようで、事件性なしということになったらしい。
けれども、氷室さんが悪い仲間と家出していたとか、変質者に襲われたとか、意地悪な噂が流れるようになり、ここに住み続けるのは娘のためによくないと両親が判断して、氷室さんは学校に戻らないまま引っ越して行った。
氷室さんが転校したと聞いた日、琴子ちゃんが「いなくなって、良かった」と呟いた。
「えっ」
私は、ぎょっとして琴子ちゃんの横顔を見た。
「琴子ちゃん、何かしたの？」
「ふふ。何もしてないよ。ただ、あんな人いなくなったらいいのにって思っただけよ」
琴子ちゃんは冷たく笑った。
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