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5. 呪い
私は昴太と付き合うことになった。家族公認で、互いの家に行き勉強したり、休日に映画に行ったりした。
クラスの友達は昔からの付き合いを知っていたので、「お似合いのご夫婦」なんて揶揄ってきた。
けれども、琴子ちゃんだけは違った。下校の時に聞かれた。
「詩織ちゃん、菅原君と付き合ってるの?」
「え、う、うん」
「でも、前に仲いい幼馴染で、そんなんじゃないって言ったよね?」
責めるように言われた。
(もしかしたら、琴子ちゃんも昴太のことを?)
私は不安になった。
「ごめんなさい。あの時はそうだったんだけれど」
隠してもしかたないし、正直に謝った。
「詩織ちゃんの嘘つき! 許さない! もう、いなくなればいいんだ!」
琴子ちゃんは怖い顔をして言った。
私は恐怖に引き攣った。
琴子ちゃんが、誰かがいなくなればいいと願うと、本当にいなくなる気がした。
(私が消えちゃうの?)
怒って去って行く琴子ちゃんを、私は茫然と見送った。
私は恐ろしくて、でもこのことを誰かに言う勇気もなくて、ただ怯えていた。
夜、ベッドに入ると夢を見た。
小学生の時に琴子ちゃんの家で見た、あの黒い壺から黄色く目を光らせた黒い大きな犬が三匹出てきて、こちらに向かって走ってくる夢だ。
はっとして目が覚めると、朝になっていた。
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