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「残念だったね」
帰り道で琴子ちゃんが慰めてくれた。
「詩織ちゃんの方が上手だったよ」
琴子ちゃんは優しいなと思い、「ありがとう」と微笑んだ。
「あ、モカちゃん!」
その時私は向こうから来る犬に気付いた。
下校の時、犬を散歩させているおばさんがいて、会えば犬に触らせてもらった。その犬はミニチュアダックスフンドで、名前を『モカちゃん』と言った。
「モカちゃん可愛い」
いっぱい触ってモカちゃんにバイバイしたあと、「私、犬を飼いたいんだけど、ママとお兄ちゃんにだめって言われているんだ」と琴子ちゃんに言った。
父と私は犬好きだったが、母と兄が動物アレルギーだった。
「そうなんだ。うちに犬、いるよ」
琴子ちゃんが言った。
でも一度もそんな話聞いたことないし、今だってモカちゃんに触ろうともせず離れたところから見ているだけで、とても犬好きには見えなかった。
モカちゃんもなぜか琴子ちゃんが近づくと、いつも唸り声をあげて威嚇する。
「本当に?」
「本当だよ。じゃあ、確かめにうちに来る?」
琴子ちゃんはムキになって言った。
「うん。行く!」
「じゃあ明日、学校から帰ったら公園で待ってて」
私たちは約束した。
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