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「そっか」
琴子ちゃんは笑顔になり、「なんか氷室さん、ちょっと偉そうだったね。詩織ちゃんの方がずっと可愛いと思うよ」と言ってくれた。
「ありがとう」
琴子ちゃんは優しいなと思ったが、ふと前にもこんなことがあったと思い出した。
「あんな人いなくなっちゃえば、詩織ちゃんが一番になれるのにね」
琴子ちゃんがぼそっと呟いたのを、私は聞き逃さなかった。
氷室さんのことや、琴子ちゃんの呟きに、なんとなくすっきりしないまま家に帰ると、リビングが賑やかだった。
高校生の兄が、学校の友達を連れて来ていた。
「詩織、おかえり」
「おかえり! 詩織ちゃん」
「ただいま。あ、マサさん、こんにちは」
驚いたことに、兄の親友のマサさんは髪の毛を金髪に染めていた。背が高くて肌が白く、顔も綺麗なので、金髪がよく似合っている。
「マサは将来、親の跡継がなきゃならないんで、今、自由を謳歌するしかないんだ」と、兄が前に言っていたのを思い出した。
マサさんは急に立ち上がると、私に近づきじっと見た。
「え? 何かついてます?」
私が聞くとふっと笑って、「ごめん、ごめん」と言い、私の制服の肩を触って、「獣に触った? ほら、毛がついてるよ」と何かの毛を見せてくれた。
「えっ?」
動物には触れていないので不思議だった。
「ありがとう。どうぞごゆっくり」
私は首を傾げながら、自分の部屋に行った。
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