愛してるを君に。

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 市役所の市民課でウルフカットの黒髪で痩せ型の青年がパソコンとにらめっこをして端末入力処理に追われていた。その青年の名は神宮寺京也(じんぐうじきょうや)といい今年で25歳になる男だ。端正な面持ちで如何にも女子受けする風貌をしているのだが、何故かとんと浮いた話のない堅物である。 ――――なんだって今日はこんなに忙しいんだ。よりによって今日に成らなくてもいいだろうに……。――何かうらみでもあるとでもいうのだろうか。本当に最悪だよ。  俺はそんな事を考えながら仕事をこなしていた。と言うのも今日はどうしても定時に帰らなくては成らない理由があった。――そう。大事な用事があった。だから俺は是が非でも今日は定時で上がらなくてはならないのだ。――漸く彼女に逢える。だから、絶対に伝えなきゃならない言葉がある……。  京也が鬼の形相で打ち込みをしていると作業が何時に無く順調に進み定時には上がれるめどが立つと徐にため息をつく。 「ふうーーーーー」  そして、背をそらし体を伸ばして、今度は頭を二度、三度ふり肩と首のこりをほぐす。 「あら、京也君。今日は早いわね。定時かしら」  するとモデル体型の綺麗な女性に話しかけられる。 「あっ、鈴木さん。お疲れ様です。そうなんです。ちょっと用がありまして今日は定時なんですよ」 「へーーー、京也君が用あるのって、本当に珍しいわね。もしかして彼女さん」  鈴木が悪戯気に笑みを浮かべからかい半分で訊ねる。 「そんなんじゃ無いですよ。――けど大事な人です」 「ふーん。そうなんだ。じゃあと少し頑張ってね。それじゃ」 「ありがとうございます」  京也がそう答えると鈴木は手を振りさって行った。京也はそれを見送ると腕時計を確認すると16時50分を示し後10分ある事を告げていた。
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