愛してるを君に。

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―――――後10分か。こうなると短いようで長いな。頼むから無事に定時で上がらせてくれよ。頼むから問題が起きませんように……。  京也は祈るような思いで時が来るのを待っていたが、それが効いたのか無事に時が過ぎ仕事から解放されると、そそくさと挨拶を済ませ急ぎ夜の街に消えていった。  ところ変わって駅構内。電車を降り構内を抜け夜の街に歩みを進めようと、ロングヘアーで小柄な女性が急ぎ歩いていた。彼女の名は橋本七瀬(はしもとななせ)今年で25歳になる女性だ。 ――――京也と逢うのは久し振りだな。あれから5年も経つのね。時の流れは速いわ。今日逢ったら絶対に伝えなきゃ。私が5年間秘めた思いを……。例え伝わらなくても絶対に伝えなきゃいけないんだ。早く京也に逢いたいな。  私はそんな事を考えながら駅を出ると夜の街に歩みを進めた。暫く歩くと目的の喫茶店プランタンに辿り着く。私は店の前で一つ大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせドアを開けた。ドアベルが「チリンチリン」となり店内が視界に入る。私はその中で京也の姿を探していた。一通り見渡したその時京也の姿を見付ける。と、同時に私の鼓動が早なる。私はその中で京也に向け歩みを進めた。段々と近づく度鼓動は激しくなり聞こえそうなほど高鳴っていた。私はそれを必死に抑えて京也の下に辿り着くと声を掛けた。 「京也久し振りだね」 「七瀬か。――本当に久し振りだね。もう逢う事は無いと思っていたよ」  そう二度と七瀬には逢えない。そう思っていた。七瀬から付き合った人を不幸にするという特殊な体質を打ち明けられた時から俺は……。――それが、まさかこうして逢えるとは。俺は夢でも見てるのだろうか。今、目の前に七瀬がいるのに、それを信じられない自分がいた。どれ程この日を待ちわびただろうか。絶望の中に身を置き恋焦がれたこの瞬間を……。俺は目の前に七瀬がいる事実を噛み締めていた。 「私も思っていたよ。まさか。――こうして逢う日が来るとは……」  まさかこんな日が来るとは……。もう、京也とは逢えない。そう諦めていた。私が付き合った人を不幸にする忌まわしい体質だと知ったあの日から。どれだけこの日を夢見ただろうか。そして、どれだけ絶望してきただろう。私は絶望の中で彼岸に恋焦がれ今まで生きてきたのだ。それがまさか……。私は今までの事を考えていると涙が零れ落ちた。
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