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(……あれ?僕の思考、
さっきからおかしくなってナイ?)
ふと疑問が湧いて、我に返る。
僕にとって光希は可愛いリンゴちゃんで、
愛でるべき存在のお姫様。
なのに家に帰って来てからの僕は、
光希の『雄』の部分にばかり
気を取られている。
もし玄関で匂いを吸い込んだときから
デレ茸の効果が出始めているのだとしたら、
このあと僕は、光希に――――。
(やだやだやだやだ!
せっかくデレデレの光希を楽しむ
チャンスなのにっ!)
求められる事が嬉しくて
たまに光希に抱かれる事はあっても、
僕は基本『抱く側』が好きなんだ。
他の日ならともかく、こんな絶好のチャンスを
みすみす逃すワケにはいかない……。
気合を入れ直して光希を見るが、
スプーンに乗せたホワイトソースを
口に含む瞬間を目の当たりにし、
ホワイトソースが別の液体に見えてきた。
(だから違うってばッ!消えろ煩悩!)
勝手に湧いてくる思考を振り払おうと、
首を振った事が逆効果だったのか…。
頭がますます熱くなり、目が回ってしまう。
「…ダメだ。頭が……」
「大丈夫かもっちー!?」
テーブルに手を置き、
なんとか座った状態を保つ。
「う…、ぅン。
周りに靄がかかって見える」
「俺と同じ症状だな。
でももっちーの方が辛そうだ…。
ベッドで横になったほうがいい」
(ああ。ドキドキする)
肩を借りてベッドに寝かされるまでの間
密着している光希の事が
気になって仕方なかった。
光希は…なんとも思わないのだろうか。
似たような症状が出ていると
言うくせして、デレてる様子もないし…。
「…体温は正常だな」
「ッ……」
「もっちー忙しくて疲れてるから、
キノコの効果が強く出たのかも。」
僕の襟元から体温計を抜き取り
まじまじと確認する。
(ってか、体温計ばかり見過ぎじゃない?)
構ってほしいと思うと同時に、
ある可能性が浮かんだ。
いつだって真っ直ぐな眼差しを
向けてくれる光希が、
ここまで僕に目を合わせない理由は、
もしかして――――。
「片づけは任せて、
もっちーは休みなよ」
「――――待って。みーちゃん」
ベッドから離れようとする光希の腕を掴み、
ぐいっと引き寄せる。
慌ててベッドに手をついた光希と
視線が交わった瞬間、
「――――ッ。」
細い目が放つ雄の欲求が、
僕の胸に鋭く突き刺さる。
(光希は。…僕を抱きたいんだ)
見えない釘に縫い留められたかのように
光希を見つめたまま、察した。
でも僕を思いやってくれる光希の事だ、
疲れた僕に無理させたくなくて、
この場をやり過ごそうとしているんだろうな。
きっとこの後気まずそうに目をそらして、
何でもないフリして
離れるつもりなんだ―――。
「ねエ…行かないでよ」
逞しい腕に添えた手を
肩へ向かって、する…と這わせる。
「僕疲れてて、早く休みたいのに…。
キノコの効果が切れないと眠れそうにないや」
「もっちー……」
「僕のナカ、
みーちゃんでいっぱいにシて?
頭が真っ白になるくらいに……」
(こうやって言えば、
僕の事ほっとけないデショ?)
唾を飲み込み波打つ喉を見て、
ふふ……と微笑む。
光希は一体…どんなカオして、
どのくらい激しく求めてくれるのだろう。
綺麗好きだから行為の前に
風呂に入りたがるかもしれないけど、
今夜は待ってあげない。
ああ…一秒でも早く、
匂いたつ雄の色香に溺れさせてよ。
きょうのところは
デレ茸のせいにして、
大人しく抱かれてアゲルから――――。
目論みどおり引き留める事に
成功した僕は、本来の願望を脇に置き。
抱き寄せたカラダの事だけを考えた。
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