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俺が…おかしいのか?
どう見ても犬だ。
犬が課長の席に座って大人しくはしているが仕事をしているとは…思えない。
「課長、印鑑お願いします!」
「すみません、課長。取引先からお電話です…。おまたせしております。課長はただいま席を外しておりまして…。」
「…。」
恐ろしく位にいつも通りだ。強いて言うなら忙しい時にありがちな課長への伝言メモが増えているくらいか。
それから全体会議もある。
みんなが発表した売上げ高に今後、会社の目標達成のプランを話し合う。基本は部長の発表会で社長や取締役の文句がたまに出る会議。
「……それで…この部長のプランに意見はないか?実現可能か?まだ目標まで2%以上の成績を上げないと。特に売上こそ落ち着いてるが、利益率低いぞ。」
取締役の声。
《…これ…遠回しに利益率の高いもんを売れって言ってるけど…売れないよ…。》
心の声はそのままにしまっている。
「…商談中の案件が数件ございますので、その分の加味をすれば不可能な数値ではないかと。ね、課長。」
部長が発言し課長を見る。
「ハッハッハッ…ワン!」
「…と申してますので。」
「…分かった。二人が言うならそういう事にしておこう。」
取締役は納得したようで会議が終わった。
《…あの『ワン!』は『はい』なのか…?なんだか、本当に課長の無責任な返事みたいだな。》
俺はそう考えながら仕事に戻る。
すると、今度は課長…犬がこちらを見て睨んでいる。
「ヴヴヴッ!ヴバン!」
「…。」
《…ええー、鼻にしわ寄せでこっち向いて唸るなよ。》
「ヴバン!ワン!バンバン!ガヴ〜!」
犬は俺に怒りをぶちまけているようだ。
《えぇ~。まるで課長が怒ってるやん。》
俺は頭をかいた。
「波夫さん、また課長に八つ当たりされてる。」
周りの社員のヒソヒソ話までいつも通りだ。
しかし定時だ。いつもは嫌味を言われるのも嫌だが、相手は犬だ。
「お疲れ様でしたー。」
「ワン!ワン!ウォン!」
「明日やりまーす。」
俺は適当に一日を終えた。
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