1.ジョン

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「いや、あなたに文句を言っているのではないのです。自治会に意見を言う人がいて、その人たちへのポーズとしてですね、日曜日の清掃に愛犬家の方達にも草むらの掃除をしてもらいたいのですよ」 「そんな! わたしには関係ないはずですよ」  別に掃除することが嫌なわけではない。もし、ボランティアで参加を要請されるのであれば喜んで参加したであろう。しかし、一部の不心得者の尻ぬぐいをさせられるような行為はごめんだった。 「いやあ、誰がどこでフンをして後始末をしていないかがわかっていれば問題はないんですよ。それこそ、条例違反ですからね。わからないからこそ、不心得者なんです」 「何だか不本意ですね。掃除を手伝うのはやぶさかではないですが、そうした不心得者の一人とみなされて掃除に参加させられたくはありません」  つい、犬のこととなるとムキになってしまう。自治会役員との対立はそんな感じで始まった。わたしは、散歩のたびに出会う犬友達数人に声を掛け、他の愛犬家達に非難の目が向けられないうちに見廻り隊を組織することにした。いわゆる自警団とも呼べるだろうか。  そうして、袋を持たずに散歩している人、袋を持っていても用を足した後に何もせずに立ち去ろうという人に一言注意し、マナーの向上に努めようと試みたのだった。  自警団の人数はごく少数にすぎなかったものの、効果はあったようだ。  見廻りをはじめて、三週間がたつ頃には、公園の草むらにぽつんと落ちているフンがめっきり減ってきたのだ。  結局、公園掃除に犬を飼う人が加わる話は少し延期になるかに思えた。  が、今度はわたしが代表者のように見なされてしまい、自治会の役員は直接やってきた。 「この間の件を、お話ししてから公園が少し綺麗になったようですね」  彼は素直に認めた。 「ええ、モラル向上の証ですよ。やれば出来るものですよ」 「でも、まだ、フンは落ちています」
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