君の背中

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有給を終えて、また仕事の日々に戻る。 出社してきた柏木さんに、お土産を渡してお礼を言った。 「あの島、よかったよ」 そこで起きたことを、柏木さんに伝えると、彼女は不思議そうに首を傾げた。 「あのー、実はあの記事、もう一度調べてみたんですが」 そう言って、彼女は僕に記事を見せる。 「これ、5年前の記事だったんです。当時は人気観光スポットだったんですけど、津波の影響で島民が皆、離島したらしくて」 柏木さんの話では、あの島は今は誰も住んでおらず、船も漁船くらいしか停泊しない場所のようだった。 「でも、確かにあの島に行ったんだ。それに、神社におじいさんだっていたし」 あの老人は、毎日神社の掃除をしていると言っていた。 島に住んでからずっと。 「なんだか不思議ですね」 まるで狐に抓まれたみたいだった。 でも、なんだか悪い気はしていない。 「三野さん」 すると、柏木さんが僕の顔を覗き込んだ。 「なんか以前より、すっきりしてません?」 「えっ?」 「なんていうか、憑き物が取れたみたいな」 「そうかな?」 逆に憑き物をもらってきてもおかしくない経験だと思う。 でも、確かになんだか、色々と調子が良い気がする。 ポロとしっかりお別れができたから、なのだろうか。 ともかくも、僕はもう大丈夫だ。 だからポロも、しっかり休んでくれ。 犬と一緒に生きていれば、いつかは僕らより先に、彼らは旅立ってしまう。 でも、彼らはいつだって、僕らを見守ってくれている。 ポロが心配しないよう、精一杯生きていくつもりだ。
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