2人が本棚に入れています
本棚に追加
驚いて首輪から視線を逸らす。
しかし、そこにはなにもない。
「ポロ?」
なんとなく、膝を叩いたのがポロの気がした。
ポロはよく、僕が椅子に座っていると、膝を叩いて「乗せて」と催促してきた。
膝の上に空間を作ってやると、直後に何かが飛び乗る感触がした。
そして、確かに膝の上に温もりを感じる。
なにもないはずなのに、確かにそこに、ポロはいた。
恐る恐る手を伸ばし、ポロの背中を撫でるように空を掻いてみた。
「あんたにまた会いたかったのかもな」
離れたところで、柴犬と一緒に老人が僕を見て言った。
「これから安らかなところに行く前に、あんたと一緒に過ごしたかったんだろうよ」
老人の言葉が、僕の中で止まっていた気持ちを動かした。
堪えきれなくて、涙がポロポロと溢れてくる。
「ありがとうな」
涙で視界が曇りながらも、僕はポロの魂を撫でながら言った。
「ずっと一緒にいてくれて」
最後にこうして、またお前に会えてよかった。
しばらくそうして、ポロの魂を撫でていると、今度は首筋を舐められるような感触がした。
ポロが最後に、僕のことを好きだと言ってくれてる気がした。
「僕も大好きだよ」
お前が愛おしくてたまらない。ずっと一緒にいてほしかった。
しかし、そう願った僕の気持ちを悟ったのか、柴犬がやってきて、僕の膝をトンと叩いた。
わかってる。ポロはもう休まないと。
涙を袖で拭って、僕は立ち上がった。
最後に、こうして僕のもとに来てくれた。
会えて本当に良かった。
御神木を静かに眺めた後、僕は手を合わせて拝んだ。
風がまた静かに吹いて、落ち葉と僕の涙をさらっていった。
最初のコメントを投稿しよう!