壁の花

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壁の花

 顔を真っ赤にしながら、生徒は消え入るような声で言った。 「え、あたし?」  女子生徒達と代わる代わるダンスしているナナを眼で探した。 「だ、ダメですか?」  駄目という訳ではなかった。ただ、自分は祐樹と今日、ダンスを踊りたかったのだった。 「……ごめんなさい」  頭を下げると、男子生徒は肩を落とし、同級生らしい男子生徒達のもとへ戻って行った。「よくやったよ」と一人が声を掛けていた。 「あれは傷ついたんじゃない?」  振り向くと、律が腕を組み、笑っていた。美香に歩み寄り、同じように壁に凭れかかる。 「あれは一年だな」 「悪いこと、したかな」 「まぁ、早瀬が相手ならしょうがないかな」  律は目線をダンスの輪に向けながら言った。 「そうやって、ずっと踊らない気?そういうの、『壁の花』って言うらしいよ」 「カベノハナ?」  律は、意味を解していない美香の様子に少し微笑んで頷いたが、それ以上は何も言わなかった。 「律君は、踊らないの?」
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