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答えを得られず、美香はまたナナの楽しそうな姿を眼で追っていた。周りで笑顔が弾け、みな楽しそうだった。美香はなんだか一人、置いてけぼりを食ったような気分になった、
「俺は実行委員だからね。踊ってもらう方だからさ」
美香は律の横顔を見つめた。照明で縁取られた鼻の線は綺麗で、まつ毛が長い事に気づいた。そうやって律を傍で見る事など、普段はない事だった。
「俺の親父、この学校の同窓会の役員なんだ。この行事だけは無くしちゃダメだってずっと言っててさ。最後だしね。親孝行」
律は何かとても大切なものを見るような表情で、ワルツの調べに少し身体を動かしながら、踊り続ける生徒達を見つめていた。
「それで実行委員に?」
「それもある。けどほんとは俺、こういうのが性に合ってるんだ。自分が輪の中に入るより、こうやって脇から見てる方が、自分らしいかなって」
その言葉は美香にはとても腑に落ちるものだった。人にはそれぞれ、向いている役割がある。ナナと同じ世界には、美香はいないのかもしれない。それは少し寂しくもなり、同時に納得できる思いでもあった。
「なんか、わかるな。その気持ち」
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