壁の花

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 呟くようにそう言った美香に、律は言った。 「そう?でも俺は、早瀬はあっちにいるのが相応しいような気がするよ」  こちらを見た律と、視線がぶつかった。 「まぁ、こうやって話せたし、俺は嬉しいんだけどね」 「え?」  美香が聞き返すと、ごまかすように律は言葉を続け、すぐに視線を落とした。 「美香」  「ありがとうございました!」と頭を下げる後輩の男子生徒に振り向き、軽く手を振りながらナナが美香達の方に歩いてきた。 「ねぇ、踊らない?もうすぐ終わっちゃうし」  少し息を弾ませながら、ナナはそう言い、まるで王子が王女をダンスに誘うような仕種をして見せた。その姿に、また講堂のざわめきが遠くなった。 「ダメ?」  ナナが顔だけをこちらに向け、おどけて見せた。 「もう、しょうがないなぁ」  照れたように頷き、美香は差し出されたナナの手を取った。手を引かれダンスの輪の方に向かう時に、美香は一度、律に振り向いた。 「楽しんで」  律は小さく手を振って頷いた。  美香も頷き、ナナにステップを教わりながら、ダンスを始めた。
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