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ナナ
終了時間が近づいているのと、二人が輪に加わった事で、周りの生徒達の笑みも増して行った。
ナナのステップについ行くのがやっとの美香に、ナナがそっと訊いた。
「律と何話してたの?」
ナナにしては珍しく視線を外したその問いに、少し美香は戸惑った。
「何って…律くんのお父さんがここの卒業生だとか、それでこのイベントの実行委員会になった、とか?」
「それだけ?」
ナナが少し意外そうな顔で言った。
「あと…カベノハナ?あたしの事、カベノハナって言うんだよって」
「壁の花?律がそう言ったの?」
こくりと頷く美香に、ナナは含んだような笑みを見せた。「律らしいわ」
それきりナナは何も言わず、暫く美香と歩調を合わせて、ダンスを続けた。きらきらとした照明と優雅な音楽の中で、ナナとこうしていられる時間がずっと続けばいい。美香はそう考えていた。けれど、それが叶わない事も。
イベントは一年生の男女が『ベストカップル賞』を受賞し、盛会のうちに終了となった。
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