ナナ

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 すっかり日が暮れた校庭をナナと肩を並べ歩くと、ナナにダンスを申し込んだ下級生達がみな、感謝の言葉を述べに来た。 「ナナ、かっこよかったよ」  美香が笑顔でそう言うとナナは、 「そう?美香がそう言ってくれるなら、自信持っちゃおうかな」  と笑った。 「でも、あたしは美香と踊ってる時が一番楽しかった。ありがとう」  ナナの言葉に、美香もまた嬉しくなって、「うん、ありがとう」と頷いた。  校門を出ようという所で、背後から駈けて来る音がして美香とナナは振り返った。  駈けて来たのは律だった。二人の前で止まって、肩で息をしていた。 「どしたの?律」  ナナが訊くと律は、「よかった、間に合った」と言いながら膝に手をついた。 「環七沿いの『ロンド』、わかる?」  顔を上げ、美香を見て律は言った。 「え、うん」美香は頷いた。  『ロンド』は律の言葉通り、環七通り沿いに昭和の頃からある古い喫茶店だった。最近のカフェ・ブームで注目されたが、店主が取材を受け付けない事でも知られている。ナナと何度か、帰宅途中にコーヒーを飲みに行った事があった。
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