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講堂
講堂に入ると、聞こえていたざわめきがさっと止んだ気がした。同級生も下級生も、皆がナナと美香に視線を注いでいる。勿論、校内の人気者であるナナの登場が皆の視線を惹きつけたと思いながら、以前こんなシチュエーションがあったのを美香はふと思い出した。
表参道にナナと買い物に出かけた時の事だった。路地を入った所にある小さ目のテナントビルの中で、小さなショー・イベントが行われていた。美香もナナも何かやっているな、というような気持ちで中に入った時、ナナと美香からさっとさざ波が広がっていくように、フロアが静まり返った。沢山の視線が自分達に向けられている事に美香は恥ずかしさを感じて下を向いたが、ナナはその視線を跳ね返さんばかりに美香の手を引いて歩いていった。すぐに周りはざわめきが戻り、ナナは、
「平気よ」
と美香に耳打ちした。顔を上げると、まだ幾人かの視線は二人に向いていたものの、元の通り行われているイベントの方に意識を向けていた。
「あたし達背が高いから、目立っちゃうのよ。仕方ないわ」
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