講堂

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 ナナはそう言い、イベントには目もくれず展示された新作の洋服を手に取ったり、身体に当ててみたりしていた。その姿が頼もしくて、美香はいつかナナのような勇ましい女性になりたいと思ったのだった。  ビルを出る時に、ジャケットに白いTシャツを着た美香達よりも少し背の小さな男性が歩み寄ってきた。 「よかったら、モデルになりませんか」  軽い調子の声だった。差し出された名刺を、ナナはふっと息をつきながら受け取った。 「よくないです。あたし達、興味ないんで」  ナナに行こう、と目で促され、美香は頭をちょっと下げてナナに続いた。けれど美香は、ほんの少し、興味があった。引っ込み思案な自分を変えてくれるのではないか、と思ったからだ。  あの時、ナナを振りきってモデルの仕事についていたら。祐樹の自分に対する気持ちも違っただろうか。けれども自分が変わらなければ、彼の気持ちは自分に向かわなかったかもしれない。  講堂では音楽が流れ始めた。実行委員の麻生律が壇上でマイクを手に、進行の説明をしていた。この高校には社交ダンス部があり、この後夜祭イベントは社交ダンス部の学内での発表の場でもあった。
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