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 律は聞きやすい優しい声で、流れを説明している。美香と同じクラスで、怪我をする前は陸上の高飛びの選手だった。トラックを走る長距離の選手達の端の方で、黙々と練習を続けている姿を、美香はよく見かけていた。  穏やかな性格で、彼が怒っているのを見た事が無い。いつもにこにこと、クラスメイトの話を聞いている男子生徒という印象だった。その控えめな雰囲気は、どこか自分に似ている気も、美香はしていた。  律の説明では、まずダンス部による舞踏があって、その後、一般生徒たちの時間になるという事だった。簡単なステップの説明を、ダンス部の三年生が壇上で行った。 「初めてだもんね。楽しみだな」  傍らのナナが、檀上を見つめながら言った。  噂は聞いた事があるけれど、この後夜祭は写真以外の記録をしてはいけない規則になっていた。対外的な学校側の措置だった。写真は卒業アルバムに掲載されると聞いていた。もう、卒業の事を考える季節になったのかと、ナナの整った線の横顔を見つめながら、美香は考える。祐樹ともこのまま、友達の関係で終わるのだろうか。 「律って、なんか良いよね」  ナナが呟くように言った。
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