2人が本棚に入れています
本棚に追加
「え?」
「がつがつしてない感じが良くない?」
「う、うん。そうかも」
美香は咄嗟に話を合わせた。ナナが特定の男子生徒について話すのは珍しい事だった。ナナの視線は、ダンス部よりも律に向けられている。心のどこかが少し疼くようで、美香は自分の気持ちに戸惑いを感じた。
「さぁ、それではパーティーの始まりです。まずはダンス部による円舞から」
律の合図とともに照明がスポットライトになり、正装をしたダンス部の選抜メンバーによるダンスが始まった。
ゆったりとしたワルツに乗せて踊る部員達は晴れやかで、とても眩しかった。軽やかに揺れるドレスの裾に目を奪われた。こんなに誇らしくできる事が自分にはあるだろうか、と美香は思う。
ナナは足下で少しリズムを刻みながら、円舞を続ける部員達を見つめていた。
「素敵ね」
ナナが美香に微笑みかける。くすぐったいような気分を感じながら、美香は頷いた。
「卒業する前に見られて、よかった」
「ほんとだよ。こんなだったら中止しなくても全然大丈夫じゃん」
唇を少し尖らせ、ナナが言う。そんな子供っぽい仕種を見せるところも、美香は好きだった。
最初のコメントを投稿しよう!