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「え?」 「がつがつしてない感じが良くない?」 「う、うん。そうかも」  美香は咄嗟に話を合わせた。ナナが特定の男子生徒について話すのは珍しい事だった。ナナの視線は、ダンス部よりも律に向けられている。心のどこかが少し疼くようで、美香は自分の気持ちに戸惑いを感じた。 「さぁ、それではパーティーの始まりです。まずはダンス部による円舞から」  律の合図とともに照明がスポットライトになり、正装をしたダンス部の選抜メンバーによるダンスが始まった。  ゆったりとしたワルツに乗せて踊る部員達は晴れやかで、とても眩しかった。軽やかに揺れるドレスの裾に目を奪われた。こんなに誇らしくできる事が自分にはあるだろうか、と美香は思う。  ナナは足下で少しリズムを刻みながら、円舞を続ける部員達を見つめていた。 「素敵ね」  ナナが美香に微笑みかける。くすぐったいような気分を感じながら、美香は頷いた。 「卒業する前に見られて、よかった」 「ほんとだよ。こんなだったら中止しなくても全然大丈夫じゃん」  唇を少し尖らせ、ナナが言う。そんな子供っぽい仕種を見せるところも、美香は好きだった。
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