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 しばらくの間、眼の前を滑るように移動していくワルツの輪を、二人は無言で見つめていた。  きらびやかな時間は過ぎて講堂には再び照明が灯され、生徒達のざわめきが戻った。 「さぁ、ここからは皆さんの番です。お相手はお決まりですか。紳士淑女として、礼儀正しくダンスを申し込みましょう。勿論、男子同士、女子同士でもオーケーです。時間はこれから四十五分です。それでは、音楽を」  少し照明が落とされ、流れ始めたのは「過ぎし夏のワルツ」というクラシックなワルツ曲だった。  最初は音楽が流れる中で、どうすれば良いか戸惑っていた生徒達も、少しずつ誰かを誘い、ダンスを始めた。男子生徒同士でふざけた様子で踊る組、女子生徒同士照れくさそうに踊る組から徐々に輪は広がり、学年内でも周知の仲の男女も手を取り合って輪に加わっって行った。 「あ、あの、高田先輩」  まだ輪の外にいたナナと美香のそばに、下級生らしい女子生徒が二人、おずおずとやって来て、声をかけた。 「なに?」ナナが柔らかく応じると、女子生徒の一人が言った。 「あたしと、踊ってくれませんか?」 「あたしと?」
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