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 ナナが自分を指さして訊き返した。  女子生徒はこくりと頷いた。傍らにいた友達らしき女子生徒も頷き、 「あたし達ずっと、ナナ先輩に憧れてたんです。マスクしてたって、ナナ先輩は最高だって」 「思い出にしたいんです」  もう一人も言い募った。  やはりナナは凄い、と美香は思う。ナナは誰かが思い出にしたいと言ってくれる、そんな存在なのだ。自分は祐樹の気持ちさえ、掴まえる事が出来ないというのに。  子猫のような眼で見つめてくる女子生徒にナナは、「いい?」と美香に訊いてきた。  少し心細い気がしたが、美香は「うん」と頷いた。「楽しんで」  小さく手を振って、ナナは下級生とダンスの輪に入っていった。すぐにざわめきが起こり、ナナは踊る者、周りで見ている者の中心となった。その輝くような様を、辺りに光が差すような姿を、美香は美しいと思った。  ぎこちない筈なのに優雅に見えるナナのダンスを眺めていると、傍らに誰かが立つのを感じた。 「は、早瀬先輩」  一年生だろうか、男子生徒がすぐ傍に立っていた。 「お、踊ってもらえませんか?」
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