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なんのへんてつもない真っ平らなお腹に手をそっと置くと、不思議なことに海人の手のぬくもりがまだ残っていた。神さま、最後の最後に海人に会わせてくれてありがとう。海人の生まれ変わりの海人くんと、莉子さんと洸樹さんに会わせてくれて、航大さんとも再び出会うことができた。灰色で空っぽだった私の人生にいきる希望という名の光を射してくれてありがとう。涙を堪えながら藍色に染まる空を見上げると、動画を逆再生するかのように、私の頭のなかで記憶が現在から過去へと逆再生をはじめた。
「寧音さん大丈夫?」
「航大さん、私……」
なぜ記憶を失ったか、なぜ縁もゆかりもないS市にいたのか全部思い出した。
「震災が起きる一年前に交通事故にあったの。意識が戻らず身元不明のままS市内の病院にずっと入院していたの。震災当日私は仮の戸籍を作るためにS市役所にいたの」
航大さんは動くことができなくなるほどに驚いていた。異変に気付きすぐに駆け付けてくれた海人くんと洸樹さんと莉子さんも驚きのあまり言葉が出てこないみたいだった。
「病院で調べてもらったら出産した痕跡がある。家族がいるはずなのに捜索願も出されていない。なぜ誰も私を探してくれないのかずっと疑問に思っていた。やっとその理由が分かった」
私の身に起きたちいさな奇跡は、これから起こり得る人生逆転満塁ホームランへと繋がっていく。
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