バイバイ、またね

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2011年3月東日本を大地震が襲った。私は翌日一階部分が完全に押し潰されたS市役所の瓦礫の中から偶然に発見され助け出された。そのときすでに名前も記憶も何もかも失っていた。唯一覚えていたのは海という言葉。そのまま私の名前になった。 それから13年後。小春日和の穏やかな日、私は奇跡が起こる街として巷で噂になっているエブリスタウンを訪れていた。 エブリス海岸は日が沈むとき一瞬だけ海が七色に輝くことがある。それを見た人にはしあわせと奇跡が起きるという。 昨日と一昨日と天気が雨で見れなかった。有給休暇は今日まで。明日からまた仕事だ。次はいつここに来れるか分からない。 日没まであと10分。日はまだ水平線の上にある。恋人たちの聖地にもなっているみたいでほとんどカップルばかりだ。ひとりでいるのが恥ずかしい。 あれ、あの子……。 さっきまでそのには誰もいなかったのに。半袖半ズボンの三歳くらいの小さな男の子が砂浜に膝を抱えて座り海をじっと見つめていた。不思議なことに誰もその男の子に気付いていなかった。初めて会ったのにどこかで会ったようなそんな既視感があった。 「ねぇきみ、もしかして迷子?パパとママは一緒じゃないの?その格好で寒くない?」 男の子を怖がらせないようにそっと近付いて声を掛けた。
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