2 姉妹の買い物

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2 姉妹の買い物

 ここは王都から離れた辺境の小さな城下町。  規模は小さい町だが、新しい領主がさまざまな交易や商いを奨励しており、遠方からも新しい商売を試したい商人や職人が集まり始め、町はとても活気に溢れている。  その日、キャシーは姉のフローラを誘って来週にせまった母親の誕生日プレゼントを選びに、町の大通りに買い物に来ていた。  今日も姉のフローラは、町の人たちに大人気。  フローラは城の西門近くにある小さな花屋を営んでいて、町一番の美人である。だけど、気取ったところは全くなく、明るく気さくで誰とでも仲がいい。華やかな彼女が歩けば多くの人が振り返る。挨拶の声が飛び交って、自然と賑やかな輪ができていく。  妹のキャシーはそんな姉の明るい輪には入らずに、姉のついでに自分にも声をかける人たちに、軽く会釈をする程度。  キャシーはフローラの二つ年下だ。顔立ちは姉と全く似ておらず、太い眉毛にたぬき顔で野暮ったい。姉と同じく顔に散らばったそばかすも、姉はチャームポイントになっているのに、キャシーの方はイマイチな印象に拍車をかけるばかり。 「母さんに似て、なんてかわいらしいんだ!」と二人娘を溺愛する美形の父親はいつも言ってくれるけど、一般的にどうかくらいはキャシーにもわかる。ちなみに姉は、父親似だ。  そして母親の遺伝であろう愛嬌も、どうやら姉にいったらしい。人当たりの良い姉と比べ、キャシーの物言いははっきりしていて、人によっては怖い印象をもたれることもしばしばある。  明るく美人で気さくな姉と、野暮ったいたぬき顔で気の強い妹。  そんな正反対の二人だったが、意外と仲は良かった。
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