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姉は目の前の植物たちに夢中になって、いつもどこか抜けている。
妹のキャシーの方がよっぽどしっかり者だった。
それでも自分の好きな世界をしっかり持った姉のことが、キャシーはやっぱりとても好きだった。
礼儀作法をちゃんと習えば、王都の貴族家にだって奉公に出てもおかしくない美貌。だけど、絶対にそうはならないだろうとキャシーをはじめ、家族はみんな分かっていた。
草花を何より愛し、土にまみれて力仕事をしている時が、フローラは一番いきいきしていたから。
キャシーはフローラのように、これと強く興味を惹かれるものはなかったが、働ける年齢になってからは町の北通りにある鉱石卸屋に勤めていて、雑務全般を担っている。
キャシーは几帳面な性格で、それが細かな雑務の多い卸屋の裏方にはピッタリだった。人に気を配ることも多く、小さな約束であっても違えることは決してない。荒い言動の多い鉱夫たち相手にも、臆することなく対応できる。愛嬌があって可愛がられるタイプではないが、なんだかんだと店主や鉱夫たちに頼られていた。
フローラは家を出て一人暮らし、キャシーは実家で家事の手伝いもしながら両親と暮らしている。
お互いの趣味や好みはまるで違うので、あんまり二人で出かけるということはなかったけれど、今日みたいに家族のお祝いや季節行事なんかには、時々一緒に出かけていた。
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