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僕は石と木彫りの子馬を目視で数えながら奥へと進んできたが、その数は百を超えた。
細かな丸木が束になって朽ちている物もあり、元は馬の形状だったとすると、古くには千の馬があったと考察できる。
形を残している馬も劣化しているものの、皆同じ方向を見て立っていた。
まるで同じ目的地に歩んでいるように。
このさきに先導するモノがいる…
僕のスマートウォッチが放つ光線の向きもピタリと一致していた。
千馬の守り神がそこに…
緩やかな勾配の上に陽の光が射しこんで見える。
開けた木々の間に黒い動物らしき影が!
「…………千馬の神?」
木陰から眩しい陽の下に出ると、細めた目に写ったのは馬の石像の後ろ姿。
陽に翳した手に装着してたスマートウォッチを見ると光線が消えていた。
ぐるっと回り込んで前から眺めてみる。
僕と背丈が一緒くらいで、天を見据えるような勇ましい立ち姿だ。
枯れたつる草が胴体に巻きついていたので、はがしてハンカチで汚れを拭き取った。
「あ、足が折れてる。かわいそうに。
ちょっと待っててね…」
前脚が半分の所で折れてゴロッと地面に転がっていたので、ネクタイをほどき包帯変わりにしてくっつけた。
昔は人が集まるような場所だったのかもしれないけれど、今は時代の流れに埋もれてしまったんだな…
メンテナンスの行き届いていない光景に殺伐とした静寂を感じる。
「……ひとりぼっちは、寂しいよね?」
ここに来るまでたくさん仲間はいたのに。
神様だったとしても、皆と一緒にいたほうが幸せだよ……ね?
僕は来た道を戻り、動かせる馬を運んでは、馬の神様の元へ届ける。
石の子馬も木彫りの子馬も次々と。
何度も往復を繰り返して、神様のまわりに子馬達を集めた。
遠くの馬を運んでくるのは少し疲れてしまって…
「ちょっと、休憩します…」
僕は神様の下にへたれこむと木の子馬を抱いたまま、急に意識が遠くなり始めた。
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