4.ぴよぴよ争い

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「着きました〜。下りますか?」 「うん」 副社長室に入って龍くんをそっと床の上に立たせる。 さてと、 まずは情報収集して幼児の学習が必要だ。 スマホを取り出し、膝を床についたまま質問してみる。 身長は100cmくらい、かな。 「隊長は何才ですか?」 「3さいっ」 「んふっ。それじゃあ指が2になって…  ひゃぁうっ!?  隊長、何するんですかぁ!!」 「…………」 龍くんが歳の数を間違えて、小さな手でピースをして答えた。 かわいらしいと思っていたら、いきなり! その指で僕の目潰しに突き刺してきた。 後ろにのけ反り尻もちをついてギリギリ(かわ)す。 びっくりしてつい大声をあげてしまった。 龍くんは真顔で僕を見つめてる。 子供ってコワイ! 「悪戯でもケガをするので危ないですよ?」 「オトコとふたりになったらタイマン!  いたずらするオトナあぶにゃい!」 「え?あぁ、なるほど。不審者対策ですね。  さすが番長のお子様だぁ。とても強い」 「ゆだん、しない!きゅうしょ、ねらう!」 僕が感心すると龍くんが番長の教えを唱えているようだった。 「僕は悪いことはしないと約束します。  隊長にクッキーをあげたいので、そこの  長いイスに座れますか?」 「りょーかい!」 テクテクと龍くんがイスに向かって行くと、ちょうどその時… ブファァァッ! 奥のドアが開いて博士が出てきた。 博士の姿を見るなり龍くんが指をさして言う。 「チッパーだ!」 「……誰がチッパーじゃ!!」 「……いきてるっ」 「……真守、お前、隠し子がおったのか?」 「え?ち、違いますよぉ!?」 博士もお疲れなんだろう。 事情を話すと物珍しそうに龍くんに近寄る。 「しっかし、  わいの小さい頃にそっくりじゃ。名前は?」 「ワン()リュウ()!…3さいっ」 「ははっ、それじゃあ2じゃな」 「ああっ、博士気をつけて!」 「ほれっ。小遣いをやろう」 「「 !?!? 」」 龍くんがピースサインをまたしたので目潰し攻撃が繰り出されるかと焦ったが、その指の間に博士は折り畳んだ一万円札をすっと挟んだ。 手慣れている……さすが博士だ。 スマホ検索で3歳児の生態を学ぼうとした自分が恥ずかしい。
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