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5.爺じのお告げ
「オカネくれる、いちばんあぶにゃい!
おまえダレだ!」
龍くんは万札を握って拳を作るとファイティングポーズで構える。
これも番長の教えなのだろうか、勇ましいが博士に何かあったら大変だ!
「龍くん!博士はとても偉い人なんですよ!」
「うそ、ダメ!こども、オカネない!」
「博士は子供じゃないです!えーと、
龍くんの爺じくらいかな!?」
「ん?」
僕は慌てて二人に駆け寄り龍くんをなだめた。
博士が原因不明の疾患で第ニ成長期がなかったせいで低身長のうえ、童顔な見た目で実年齢がわかりにくいのだろう。
しかも博士の愛用ジャージが小学生に見えて、龍くんが子供と勘違いしていると推察した。
「波河瀬太郎!御年60歳じゃ!」
「はぅ!ママのじいじとおなし…
あかいのでおめでとだぞ!?」
「ほう、賢いの。
わいは銀座で赤ワインタワーしたった。
金もいっぱい持っとる。
遊園地くらいならつくれるぞ?」
「はぅ!ゆーえんち!?
すゅごい… すゅご… す… … … 」
「龍くん?あれ?龍くん!?
フリーズ、しちゃいましたね…」
「バグが発生したか?
思考が容量を超えたようじゃな。
3つでこの世の不条理は理解できんよ」
僕は龍くんの顔の前で手を振ってみたが反応がなく、カチコチに固まってしまっている。
「大丈夫でしょうか?」
「心配いらん、そのうち動き出す。
人間の潜在能力は未知数じゃ。幼くとも、
懸命に考えておるから静止するのだろう」
「では様子を見ます。
テストの結果はどうですか?」
「少し修正したほうがいいかもしれん。
プログラムを入れ換えよう」
博士は最終的な指示を僕にくださり、またオフィスへと戻られた。
龍くんはというと、暫くして我に返り何事もなかったかのようにクッキーを食べ、お迎えに来た王さんにむぎゅむぎゅすると眠ってしまった。
とてもかわいい寝顔だったなぁ。
明け方に仕事が終わり博士が帰宅されたあと、小春さんが出勤するまで仮眠をとるためデスクに伏せた。
ウトウトし始めると夢のような幻覚のような光景が見えてきて…
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