319人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
今夜こそ小春さんと愛しあえる……♡
ベッドを背に色っぽいポーズで僕を誘う小春さんの姿がぽわんと浮かんだ。
疲れていても盛んに働く煩悩の強めな性欲。
『真守くん、大好き…』
エヘヘ♪
声まで再現できて耳が擽ったく、頭の中がほわほわしてきた。
僕達にも……赤ちゃん、できるかなぁ。
昨日初めて龍くんを抱っこした感覚が蘇り、小春さんが子供をあやす姿を思い出したりして。
未来にもそんな幸せな日々が訪れるだろうかと願望を時空に泳がせる。
自分の中に留まるものは、ちっぽけな不安。
命を授かる、
命を育てる。
自信がある!
と胸を張って言えないから情けない。
龍くんみたいに強い子に、博士のようにおおらかに。
僕に育てる資質があるとは思えない。
圧倒的に人生の経験不足なんだ。
大事に思う気持ちだけでは、大切な人を守りきれないのは明白。
どうしたらいいのかな……?
時間の経過に抗えない、
戻すことも伸ばすことも止めることさえも。
・・・・・こんな気持ちが昔にもあったような?
確か、
じいじが亡くなる直前のこと―――――
ばあばが癌を患い入院して50日余りでこの世を去り、じいじと僕が大きな家に残されて…
じいじは社長として働いていたから、引きこもりの僕が家事全般をおこなうようになった。
僕も太っていたから大食漢だったし、じいじも背が高く大喰らいで。
ばあばはいつも食卓にたくさんの手料理を並べてくれた。
「真守の味付けはばあさんにそっくりだ。
うまい、うまい。明日の力になるなぁ」
「いっぱい食べて。ばあばがいろいろ僕に
教えてくれたから、僕も料理好きなんだ」
丼椀に山盛りよそった白飯を二人で頬張りながら、変わらない生活を装うけれど、何処かに寂しさが漂っていた。
「…真守、困ったことになったらいつでも、
じいじを呼ぶんだぞ。俺が死んでも、
何処へでも助けに行くからな。
僕を助けて、爺じよ蘇れ!と唱えるんだ」
「何言ってんの、僕がじいじを助けなきゃ
いけないのに…」
この後数日して、じいじは本当に逝ってしまった。
82歳で高齢なこともあり、僕を副社長に指名した遺言の責任も感じて…
最後に贈る言葉をくれたんだろう。
「僕を助けて、爺じよ蘇れ……か…」
ピッカァァァッ―――――
…え?
最初のコメントを投稿しよう!