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6.異質な旦那様
「田辺さん、おはようございます。
車を西に走らせてもらえますか?
見つけたい場所があるんです!」
朝6時、オフィスビルの駐車場を出発。
スマートウォッチはずっと光線を出し続けている。
じいじのお告げにあった、千馬の守り神が祀られた場所まで、道しるべになってくれる感じがする。
スマートウォッチに光が宿ってから、なぜかスマホは通信不能になっていて使えない。
何かの暗示だろうか。
早急に解決したほうが良さそうだ。
僕は田辺さんに運転してもらってその場所を探すことにした。
光の案内する方へ…
都心から高速にのって向かう先を予測してみると、西の方角には以前暮らしていた田舎があった。
東京に引っ越してからは墓参りに訪れるくらいだったが、やはり光と共に車は見慣れた風景の中を走り進んだ。
そして千馬家のお墓に到着するも、光はまだ西へと射している。
今まで足を運んだことのない地へ。
山間に近い奥地までやって来た。
林なのか、山なのか。
光はその中へ僕を導いている。
「よしっ」
田辺さんには申し訳ないが用が済むまで近場で待機をお願いし、スーツの上に羽織るジャンパーを借りて山林へ。
枯れた細枝があちこちに伸び、地面は落ち葉で覆われている。
だが所々に新葉が生え、青々と草が茂っていた。
光が向かう先は少し荒れていたが道の面影を感じ、僕はそこから足を踏み入れた。
ガサックシャッ クシャッガサッ
一歩ずつ進むたび僕の足音がなる。
目の前に手を翳して慎重に中へ中へと入って行った。
「あっ!?…………馬だ」
朽ちているがなんとか原型を留めている木馬。
公園にありそうな遊具ほどの大きさ。
あっちにも、その先にも。
小さな木彫りの馬やお地蔵のような石像まである。
「ここに、千の馬が祀られているんだ…」
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