6.異質な旦那様

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―――――朝8時半。 社長室のドアをノックする。 「失礼します、小春(こはる)で……」 ガチャッ 「   なんだお前か……」 えー、朝から不機嫌。 素早くドアを開けてくれたのは夢蔵(むさし)社長お義兄さんだったが、私を見るなり落胆したご様子。 ドアを開けっぱなしですぐに背を向けて、応接用のソファにドガッと座って足を組んだ。 入室しドアを閉めて中を見渡すと社長だけのようで、お義姉さんに会いたくて来たのだけれど見当たらない。 咲月(さつき)お義姉さんは夢蔵社長と結婚し、千馬興産の秘書として社員になった。 (まき)さんのもとで業務に携わっている。 咲月さんの秘書姿は様になっていて、牧さんに似ているともっぱらの噂。 仕事が早く生真面目で気配りのできる女性。 細身のパンツスタイル、長い黒髪をひとつに結び眼鏡をかけたスマートな容姿。 社長夫人ながら控えめで気立てが良く、社員からの評判も高い。 自慢のお義姉さん!私も精進しなければ!! また、お義母さんであり千馬雅(ちばみやび)CEOの補佐にも抜擢された。 CEOが咲月さんの能力を評価しての御指名とか。 新しい事業も計画にあがっている決算期。 新年度に向けて変化が起こる時でもあるのだけれど… 「咲月さんが朝は社長室にいると言っていた  ので伺ったんですが…」 「そろそろ戻ってくる…」 社長はイライラしているのか足を揺すりながら答えた。 なんか、面倒くさそう〜。 心でつぶやくと、ちょうど仰っしゃる通りにドアが開いて咲月さんが現れた。 「あ、咲月さ…!?」 「咲月!!」 私はドア付近に立っていたので声をかけた、ところへ社長が割って入って来る。 早っ! 咲月さんの両肩を支えゆっくりソファに座らせると、自分も隣に座って心配そうに顔を覗きこむ。 「大丈夫か?」 「ええ…。小春さん、どうぞ座って」 私も社長同様に心配で、隣に座り近くで顔色を確認する。 華奢な体が一層ゲッソリして見える。 少し青ざめた顔の口元にハンカチをあてて、咲月さんは私に優しく微笑んだ。 つらそうでどうしていいものか、私も困った笑顔でお返しする。 咲月さんは妊娠8週目。 悪阻(つわり)がひどく嘔吐が止まらないのだそう。
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