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副社長室を飛び出し駅に走った。
千馬家のお墓参りはこれまで二度したことがある。
場所は把握していたので、新幹線に在来線にタクシーを乗り継いで…
田辺さんに聞いた通りの住所にたどり着く。
「田辺さぁん!良かった〜」
「……奥様!」
真守くんの送迎車、田辺さんの運転するベンツが停まっていたので、タクシーを下りて駆け寄った。
おろおろと田辺さんも運転席から出てきて私はホッと一安心。
真守くんがこの辺りにいるのは間違いなさそう。
都心からニ時間近く移動にかかり、ずっと気が気でなかったので胸をなでおろす。
詳しい事情を田辺さんに聞いて…
と声をかける前に、慌てふためいた様子で落ち着きなく田辺さんが喋りだす。
「真守坊っちゃんがこうやって腕時計を
ピーっと、ピーっピーってな感じでぇ、
いろんな方へ向けて来たんでやんす。
ここだ!と車をおりたら、
こんな荒れた山林に入るってんでオラは
止めたんですが行かなきゃならねぇって。
あ、そんな言い方真守坊っちゃんはして
やせんっ。
どうしても入るってんでオラのジャンパー
をお貸ししやした。ですが、オラァ心配で
心配で。怪我でもしやしねえかと。
連絡するから近くで好きにしててくれって
言われても離れがだぐてぇ。
どうしたらいいっぺ頭抱えてたんでさぁ。
奥様来てくれて助かったぁっ。ふぅ〜」
・・・え?
ええっ??
私いま真守くんの失踪より衝撃受けてるよ…
田辺さん、
めっちゃ喋るひとだったんだね!?
しかも方言でまくり!
びっくりしちゃったけど、真守くん思いのイイ人に変わりはない。
「そ、それで、
真守くんから連絡はありましたか?」
「まだありゃぁせん…」
ニ時間以上この中にいるってことか。
真守くん三徹明けだし、倒れててもおかしくない。
「私、見つけて来ます!」
一層慌てる田辺さんを静めて押し切った。
社長がアレなもんで報告を躊躇ったけれど、田辺さんに任せて私は真守くんの捜索へ。
お借りしたレインコートを羽織り、鬱蒼とした樹木の中へ足を踏み入れる。
草がへなっとしているのは真守くんが通って行った証拠だろう。
「まーもーるーくーん!!」
どうか真守くんに会えますように!
私は前へ突き進んだ。
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