22 私が掴もうとする未来、王子が掴んだ未来

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「決めた」 「何をお決めになったのですか?」 「父上に直訴する。婚期を早めてもらう」  歩みながら言葉を続けた彼は、城内に入るとレジーナを振り返った。 「嫌か?」  ジーナが首をふるふると横に振る。  嫌なわけない。  嫌なわけないが、そんなこと許されるのだろうか。  そして突然、ルートヴィッヒが床に跪き、レジーナの手を取った。 「レジーナ・フォン・ローエンシュタイン伯爵令嬢。貴女にこんなにも恋をする愚かな男に慈悲を。貴女を守り、貴女を幸せにすると誓う。残りの人生全てを私と歩んで欲しい。どうか結婚してくれないだろうか」  城の入り口で突然始まったプロポーズに、レジーナは勿論のこと、衛兵は槍を落としそうになり、何事か伺っていたメイドはあんぐりと口を開け、後ろから付いてきていた文官は書類をばらまいた。  レジーナは片手で口を押さえたまま固まっている。  ルートヴィッヒは強い眼差しで彼女の瞳を捕らえたまま、同じ姿勢で答えを待った。  答えなければ。  答えなければ。  はいと言わなければ。  わかっているが、驚きに勝る喜び、そして混乱が喉を塞いでしまったかのように声が出ない。 『ジーナなにしてるの!早く!早くハイって!』 『……っ』 『あーもう見てられないよ!』  固唾を飲んで見守り全てが凍り付いたような空間に、炎が現れた。  それは小さくやんちゃなドラゴンで、レジーナから飛び出すと彼女の後ろに回り、なんと背中を蹴っ飛ばした。 「…っ!?」 「…っ!!」  蹴飛ばされたレジーナはよろめき、そのままルートヴィッヒの胸に抱かれた。 『ハイだよ!ルト聞いてハイだよ!!』  プレッツェルの懸命な叫びなど聞こえないのだが、意図を察したルートヴィッヒは腕の中のレジーナに「“はい”は?」と聞いた。 「はい…」  やっとレジーナが答えると、2人を見守る周囲の者から盛大な拍手と歓声が上がった。  婚約者とは言え、それは国王や他に役人もいる前で交わした書類のこと。  こうもはっきりと、結婚を乞うための言葉を並べたてられたのは初めてだ。  騒動に気づいた使用人や臣下が続々集まって来ると、割れんばかりの拍手と歓声、時々冷やかしの声が響いた。  その中心で、小型のドラゴンは宙で踊るように飛び、今しがた結婚を誓った若い2人は口づけを交わしていた。
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