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「ふあ…なんかこの本回りくどい。退屈」
「そうかしら?なかなか興味深いと思うけど」
「母上はもう読んだの?」
「ええ、せっかく贈っていただいたのだもの。それに“学校”の出身者なのですからこんな嬉しいことはないわ」
「ふーん…ねえ、もう今日の勉強は終わったよ。プレッツェルと遊びたい」
「庭で遊んでね。またこの間みたいにクライン・フェーを割られたら嫌よ」
「あれはぼくじゃないよ!プレッツェルが尻尾振り回すから!あ、待ってプレッツェル!母上行ってきます!」
「ちょっと、走るのは外に出てからにして!もう。お母様、お父様が今日は陽気がいいから外でお茶にしないかって。お体はどう?」
「大丈夫よ。でも元気が良すぎて…ほらまた」
「え、触りたいです!」
「ほらこの辺、ここ」
「動いてる!」
「あなたもかなり元気が良かったけどね」
「嘘よ。私はほら、こんなにお上品ですもの」
「ふふ、では今度おば様に見て頂かないと」
「そ、それはまだもう少し、いえうんと先で…ね、お父様がお待ちだわ。早く行きましょう。あー駄目、お母様はゆっくりね」
今日も賑やかな家族の声が王都の城に響く。
レジーナは庭に愛しい人の姿を見つけると、少女の頃から変わらない可愛い笑みを零した。
国王となったルートヴィッヒもそんな彼女を柔らかく抱きしめ、大きくなってきたお腹を撫でる。
彼らの頭上には無知な令嬢が逃げ出したあの時と変わらず、可能性を秘めた青い空が広がっていた。
高く、大きく、どこまでも無限に……
完
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