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また一人になった空間で眺めるのは窓の外。
裏庭には騎士が整列していた。
国王から招集がかかればすぐに馳せ参じることができるよう、諸侯は多かれ少なかれ騎士団を所持している。
3階のこの部屋までは何を指示しているのか聞こえないが、騎士たちは2人1組に分かれると稽古を始めた。
レジーナはベッドの下に隠してある箒――これはかなり昔に掃除のメイドが忘れていった物だが――を取り出すと、見よう見まねで素振りの練習をする。
ほとんどやれることのないこの部屋で、唯一体を動かしてできるのがこの騎士との合同練習だった。
「よくわかんないけど、カタチだけはそれっぽいよね」
プレッツェルは、右に左に繰り出される箒を目で追いながらそう言った。
レジーナは「そうでしょ」と息を弾ませながら答える。
これで実際に剣を持ってどれほど戦えるのかは未知数だが、体を動かすのは数少ない娯楽の一つだった。
やがて騎士も解散してしまい、レジーナは遠くにいる庭師が花の手入れをしているのをぼんやりと眺めた。
ふと視線を上げると、鉄格子の一部が錆びついているのが見えた。
試しに掴んでみると、ガタガタと音がする。
「ねえプレッツェル、これってひょっとしてひょっとするんじゃない?」
「ひょっとするかもね。強い力加えたら外れそう」
鉄格子は1本でも外れたらレジーナの細い体は通りそうだった。3階という高ささえなんとかすれば、外に出られるかもしれない。
「外に出るの?」
「出るに決まってるじゃない。ここにいても私の未来なんてないわ。冒険をするのよ!」
それからというもの、レジーナはこっそり鉄格子と格闘しては脱走の計画を練った。
カタッ…
「取れた…」
約1か月して、錆びた鉄格子は外れた。やっておきながらびっくりしてしまい、思わず元の位置に戻す。
「何してるの…」
プレッツェルが飽きれた声を出した。
「ちょ、ちょっとびっくりしちゃって。この隙間…私の頭も入りそうね。体もすり抜けられそう」
「どうする?今夜逃げちゃう?」
「そうね。計画はたてたし、逃げちゃいましょう」
そう言うと窓から離れ、日中はいつも通り過ごした。
今夜、ついに望んだ自由が手に入る。
こんな部屋に、侯爵家に別れを告げ、私は自由に生きるんだ。
午後の騎士団の訓練が長引き内心ヒヤッとしたが、夜になると彼女は屋敷が寝静まるのを待ってから計画を実行した。
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